長嶋一茂というのはとても珍しいキャラクターで、その特異性ゆえに芸能界を上手に生き抜いています。本業の野球では典型的な「ダメ二世」でありながら、その黒歴史部分をまるでマイナスに感じさせず、「東京のお坊ちゃん」の良さも悪さも体現し、なおかつコメンテーターや俳優としても才能を発揮してマルチに活躍しています。類似タレントとしては松岡修造や石原良純などが上がるのでしょうが、その中でももっとも自由で好き勝手な言動をしながら人気も需要もあるのですから、ある意味では無敵状態です。
その一茂がテレビ番組で「尊敬はしているけれども嫌い」な人として野村克也と張本勲の名前を挙げました。日本球界のレジェンドです。同じ野球人として「嫌い」と言うのは憚られるというよりは「言ってはダメ」な相手だろうと思いますが、堂々と公言できるところが無敵なのです。もちろん一茂はバカではないので、それを言っても本人や本人の周りも「あいつが言うのは仕方ない」と笑ってくれるという計算、もしくは関係性が成立しているのでしょうし、野村、張本という人選も絶妙です。ただそれが無かったとしても「長嶋茂雄の長男」である立場の強さがどれほど無敵なのかということです。一茂以外で野村や張本を堂々と嫌いと言える野球人は、杉下茂や広岡達朗クラスの長老だけでしょう。もちろん一茂が野球人というよりは芸能人にポジションを移していることも大きいとは思います。
「尊敬しているけれども嫌い」というワードのチョイス自体も多くの人が「あるある」と頷く巧さがあります。特に一茂のように「同じ業界で素晴らしい業績を残している先輩」を思い浮かべると、誰しも自分なりに「いるいる」となる人が多いでしょう。同じ業界だけに仕事ぶりの素晴らしさと、その人間性を両方理解できるからこそ思い浮かべやすいはずです。僕も思い浮かぶ人がいますが、一茂のように公言することなど到底できません。言っても内輪話でこそこそと悪口を言うくらいなものです。それに尊敬されているだけ素晴らしいことで、尊敬されないし嫌われている先輩の方が世の中には圧倒的に多いです。僕は小物なので、尊敬されなくても良いからあまり嫌われたくはないなと思っていますけど。
