最強の新弟子

 大相撲九州場所はここまで横綱大の里が全勝、それを1敗で関脇安青錦が追う形になっています。期待通りの展開ですが、逆に言えば驚きもなく予定調和なので面白みには少々欠けるかも知れません。大の里も安青錦も出世の最短記録を更新し続ける勢いでここまで勝ち上がってきました。2人が優秀なのは間違いありませんが、壁になるような力士がいない、それだけ全体の層が薄くなってきたという証拠かも知れないとも思っています。

 そんな中、「最強の新弟子」と呼ばれる旭富士が前相撲でデビューしました。23歳。所属する伊勢ケ浜部屋の伊勢ケ浜親方は元横綱照ノ富士、その先代の親方だったのが元横綱の先代旭富士です。まだ正式に番付に載ってもいない前相撲の力士が横綱のしこ名を名乗るというのは異例中の異例ですが、旭富士のこれまでの経歴も異色です。モンゴル出身で日本の高校を卒業後、2021年に伊勢ケ浜部屋の研修生となりましたが、相撲部屋の外国人力士は「1部屋1人」制度。伊勢ケ浜部屋には横綱照ノ富士がいたため、正式な入門が先送りとなり、4年半もひたすら稽古のみに邁進しました。いつデビューできるかもわからないのにずっと部屋で稽古に明け暮れるというそのメンタルの強さも素晴らしいです。

 照ノ富士が引退したことで今場所晴れて前相撲でデビュー。来場所から番付に名前が載ります。4年半も部屋で稽古してきたので新弟子ながら実力はすでに三役相当という話。伊勢ケ浜部屋には幕内力士が多くいますが、部屋の先輩力士である前頭上位の熱海富士や伯桜鵬をすでに圧倒しているということですから、もしその通りなら確かに三役クラスです。部屋の稽古場と本場所では全然違うだろうとは思いますが、さすがにそれだけの実力があれば序の口、序二段、三段目では無敵状態、負けるはずがありません。

 序の口、序二段、三段目はそれぞれ全勝優勝すれば1場所で通過できる決まりになっています。幕下だけは三段目で優勝しても幕下15枚目以内に入れないと次に幕下全勝優勝しても幕下筆頭にとどめられてしまうので、番付運に左右されます。とは言え毎場所7戦全勝の28連勝して5場所目には十両昇進、史上最速で関取になる可能性は十分です。ただ本当に大事なのはスピード出世ではなく、最上位の横綱に辿り着けるかどうかなので、しっかり実力を蓄えながら出世していくことも決して悪いことではありません。大の里一強時代に入りつつありますが、旭富士が再来年には大の里のライバルの位置まで上り詰めることができるかどうかが注目です。

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