サックスを嗜むボーカリスト

 今日は年に一度のサックスの発表会でした。いつも家族的な雰囲気でワイワイと楽しくやる発表会で、顔見知りのサックス仲間も多く、長丁場ながら飽きません。しかも今回はピアノバーでの発表会ということで、高いステージ上で演奏するホールと違って、客との距離が近くて同じ平面に立つライブハウスの発表会は、より気楽でかつジャジーな空気になりますから、緊張も和らぎ演奏もしやすく感じます。
 今日の曲はレイ・チャールズの歌で有名な「Gerogia on My Mind(我が心のジョージア)」です。アメリカの故郷の田舎を思い出して歌う、日本で言えば「津軽海峡冬景色」みたいな歌だと言えば良いのでしょうか。テーマは単純で簡単です。今回の一番の課題はテーマを吹いた後のアドリブで、16小節をアドリブで吹くというところが初挑戦になります。これまでアドリブを書いてある楽譜を吹いたことはありますが、自分でアドリブを作るというのは初めてなので、この数か月かなり苦労してあれこれやってきました。
 ただこの2週間くらいで、だいたいこんな感じで吹けばアドリブはうまくいくかな、というところが掴めたので、その「こんな感じ」を激しく逸脱しないように吹ければ多分大丈夫だろうと少し安心していました。ところが発表会10日前のレッスンで先生が「後テーマは歌うでしょ」と言い出しました。ジャズの基本的な構成として、テーマ吹いてアドリブ吹いたら最後にもう一度テーマを吹きます。その後テーマをサックスではなく歌でやろうという話です。
 確かにこの曲を発表会で演奏するという話になった数か月前にそんなことも先生は言ってましたが、本気か冗談なのかわからなかったので放置してきました。10日前になっても何も言わないので、一応聞いたら「そりゃやりましょう」と言うので、急遽歌うということになり、そこからあーだこーだと構成を考えて、実際に歌ってみて「こうした方が良いんじゃない」みたいな話を詰めました。そして発表会2日前の最後のレッスンで、歌い終わったらエンディングでもう一度サックスを吹こうか、ということになり、直前までバタバタとしてしまったので、アドリブよりもそちらの方が気になりながらの当日になりました。
 リハーサルではほぼ思い描いていた通りに全部できたので「よし大丈夫」と僕も先生もバックで演奏してくれているプレーヤーの皆さんも思いました。ところが本番はやはり何か起きるものです。アドリブでちょっとテンポがずれました。これはバックの一流プロの皆さんがうまく合わせてくれました。歌は調子に乗って気持ち良く歌いました。歌い終わったら手に持っているマイクをスタンドに戻して、最後にサックスを吹くのですが、楽譜上では歌が終わったら1拍しかサックスに戻る時間がありません。それなのにマイクをスタンドに戻すのに手間取ってしまい、そのまま曲が終わってしまいました。先生とバックの3人がマイクを戻せずにオタオタしている僕を見て爆笑していて、そんな自分に自分も笑えてしまったので、プレーヤーだけが謎の大爆笑で終わるという楽しそうだけど良くわからない結末になってしまいました。
 まあ最後は失敗しましたが、それ以外はまあまあの出来でしたし、何より観客に受けたので満足です。サックスの発表会で歌うというのはかなり飛び道具でしょう。ピアノやギターなら弾き語りもあるでしょうけど、サックスは吹いていたら歌えませんから。発表会が終わってからも何人もの生徒さんたちに「驚いた」「上手い」「やりますね」などと誉められました。ただ誉め言葉は歌に限定されていて、サックスを誉めてくれた人は残念ながら記憶にありません。1年頑張ったサックスよりも10日で仕上げた歌の方が受けるのですから、ボーカリストが余興で吹いたサックスみたいな気分です。まあそれも含めて狙い通りに受けたから良いんですけどね。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次