朝ドラ『あんぱん』がどうも失速気味に感じます。もちろんそれは僕の「個人の感想」なので、そう思わない人もいることでしょうが、僕としては話がダレているとしか思えません。特に主人公ののぶが「何者にもなれなかった」とかウジウジとしていたところなど「それいる?」と思ってしまいますが、脚本の中園ミホは女性のそうした心理を「あるある」として描きたかったのかも知れないと推察しています。
とは言え、やはりやなせたかしがモデルである以上、彼の多方面にわたる活躍をもっと見せて欲しいし、活躍だけではなくその裏にあった苦しみにも深堀りして焦点を当てて欲しいのですが、主人公ではないからかどうにもそこの描き方が薄いというか、あっさりしていて物足りません。創作をする人間を描くことこそ、同じクリエーターであるドラマの作り手としてはやり甲斐があるのではないかと思うのですが、それよりも女性の社会的な自立についての悩みの方が朝ドラとしては関心をひきやすいというマーケティング的な判断なのでしょうか。
朝ドラに限らず大河ドラマでもそうですが、NHKは「誰々の妻」を主人公にしたがるわりに、夫と妻のバランスが中途半端になりやすく、いつもドラマとしてのダイナミズムが失われてしまいます。主人公が若いうちはそれでも面白いのですが、中年以降、史実では活躍する夫とそれを支える妻になってしまうので、主人公である妻が全然魅力的になりません。いっそのこと夫の活躍は放置して、ずっと妻の側の話を描くなら面白くできる余地もあるかもと思いますが、著名人である夫の業績もしっかり描こうとすればするほど、妻は脇に置かれてしまい、時々主人公であることを思い出したかのように妻の葛藤など描くという今回のようなパターンに陥りがちです。
活躍した夫の陰には、それを支えた妻の存在があり、その妻がいなければ夫の活躍もなかった、ということを描きたいのはもちろんわかりますが、妻が夫と同じくらいの能力を持っていて夫の業績の半分は妻の活躍があったからというならともかく、そうじゃなければ素直に夫を主人公にした方が面白いだろうと思います。同じ史実を元にした朝ドラでも『エール』や『らんまん』は夫が主人公でしたから話はわかりやすかったですし、妻を主人公にするなら『あさが来た』や『虎に翼』のように史実でも活躍した女性をモデルにすれば良いと思います。
長年にわたり若い女性の成長ドラマを作ってきた朝ドラですから、男性が主役なのはなるべく避けたいと考えているのかも知れませんが、それで後半失速するくらいなら素直に今回もダブル主演としておけば良かったのになと思います。秋から始まる『ばけばけ』も主人公は小泉八雲の妻のセツがモデルです。不安しかありません。

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