仲代達矢が亡くなりました。92歳。自分の親世代の著名人が亡くなるたびに、もうそういう年齢かと自分の親のことを思います。そして子どもの頃から見てきた仲代のような俳優が亡くなるたびに若い頃の出演作を見返したくなります。と言っても、どちらかというと舞台中心に活躍していた人だけに、長いキャリアの割にはそれほど多くの作品を見たわけではありません。それでもこれだけ印象が強烈なのは、やはり仲代の傑出した存在感あってのことだと思います。
一番最初に強烈に印象に残ったのは1975年の映画『青春の門』でした。高校生でしたが五木寛之の原作を読んでいたので名古屋伏見の名宝劇場で見たのを鮮烈に覚えています。仲代と吉永小百合の濡れ場が話題になっていましたが、高校生には関根恵子の方が刺激的でした。それはともかく、仲代の荒々しい筑豊モノが強烈で、この人は凄いなと感動しました。吉永小百合、関根恵子以外にも初々しい大竹しのぶも出ていましたが、この映画で一番印象が強かった俳優が仲代でした。
次に1980年の映画『影武者』。黒澤明監督の5年ぶりの新作でしかも戦国時代が舞台とあって大いに話題になりました。しかも主演の勝新太郎が黒澤と対立して降板、代わりに仲代が主演になったといういわくつきの作品でもありました。世代的に黒澤の新作が公開された時に見たのはこれが初めてでしたが、絢爛豪華で壮麗な作品の中で、仲代がその絵の強さに負けない存在感を見せていました。ただ当時も言われていた通り、これを勝新太郎が演じていたらどうだったのかという思いは僕にもあり、仲代はちょっと損をしたなという気もしていました。
テレビドラマでは大河ドラマ『秀吉』の時の千利休役も印象深いです。未だに千利休は仲代達矢がスタンダードではないかと思っています。また『風林火山』の時の武田信虎も良かったです。信玄役の市川亀治郎(当時)ではとても勝てそうにないなと感じました。ドラマの『世界の中心で、愛をさけぶ』で特別出演していた時には「おっ、仲代達矢だ」と思わず口にしてしまったくらい特別感がありました。とにかく出てくるだけで強烈なオーラを放つことができる俳優でした。ちなみに古い黒澤作品では『天国と地獄』の警部役が印象に残っています。「無名塾」を作り多くの俳優を育てたことでも知られる仲代ですが、やはり何と言ってもあの強烈な存在感は他を圧倒していました。ご冥福をお祈りいたします。
