曖昧の効能

 高市「台湾有事=存立危機事態」発言による日中間の摩擦は収まる感じがありません。威勢の良いことを言ってしまって退くに退けない高市政権は、このまま中国が強硬な姿勢を崩さないと早晩政権が危うくなるのではないかと思います。高市は国会で発言の撤回を拒否しながらも「特定のシナリオについてコメントすることは今後は慎む」と言外には「失言でした」と認めてみたものの、それでは中国が納得しないのも当然のことなので、このまま突き進めば中国は渡航制限に加えてさらに日本との貿易や企業活動に対して制限措置を打ち出してくる可能性が高いです。インバウンドで打撃を受ける観光業や小売業のみならず、製造業など多くの企業が大幅な減益を受けるリスクが高まれば経済界や財務省、経済産業省なども政権に対して圧力を高めてくることでしょう。物価高に加えてモノ不足、エネルギー不足で国民生活がさらに困窮するようなことになれば、いくら高市政権を支持している極右層の声が大きいと言えども、さすがに政権交代を望む声が高まるのは防げないでしょう。

 高市政権が倒れるのは本人の失言のせいなので仕方ないとしても、その前に日本の国益が大きく損なわれることにならないような着地点を自民党が用意できるかどうかがポイントです。国際社会で孤立し、経済がボロボロになり、弱っているところをトランプにつけこまれてさらに要らない武器などを爆買いしたりしないうちに方向転換をできるかどうかは、高市を担いだ自民党が責任を取らなければなりません。高市同様に「台湾有事=日本有事」だと主張してきた麻生にはさっさと引導を渡して引退してもらって、岸田なり石破なりが総理に再任するか、林とか小泉を擁立して立て直しを図って欲しいものです。本来政権交代を担うべき立憲民主党には大きな期待は到底できないので、やはり自民党内の穏健保守派に期待するしかありません。多分穏健派が主流に戻れば公明党も連立に戻ってくることでしょう。

 それにしてもマスメディアはなぜもっと強く高市発言を批判しないのかわかりません。「言ってること自体は間違っていない」とか内向きの擁護ばかり繰り返しているから、現実はどんどん悪い方に進んでいるのに、どこにもリアリストはいないのでしょうか?中国相手の外交がそんな「言ってやった」みたいな溜飲を下げるような言葉でうまくいくはずがないことなど、過去に散々経験してきたはずです。どんなに中国共産党が嫌いだとしても、また台湾に対して愛着を感じているとしても、それとこれとは話が別であることくらい、大人ならわかるはずです。中国と台湾の問題は国内問題であると日中でも合意しているのですから、余計な口を突っ込んだら中国が怒るのは当たり前です。お互いにわかっていて有耶無耶にしてきたのですから。

 今回あの安倍晋三ですら首相在任時は台湾問題を曖昧なままにしてきたということが繰り返し語られているように、現実の難題はなんでもハッキリさせれば良いと言うものではないのです。曖昧にしておくことで丸く収まっていることは政治や国際関係に限らずいくらでもあります。高市は総理になって発言がトーンダウンしたとネットで言われたことがきっと引っかかっていたのでしょう。だからつい踏み込んだ発言をしてしまって、せっかく習近平と仲良くしてきた会談を台無しにしてしまいました。高市信者も高市を支えたいならこれ以上余計なことを言わなくてもいいように、そして素直に謝る時は謝れるようにしてやるべきです。威勢の良い発言ばかり高市に強要することは、高市の政治家としての選択肢を狭めるだけです。剛速球だけではなくカーブやフォークも投げてこそ抑えられるというものでしょう。せっかくようやく誕生した女性宰相がこんな短期間で「ダメ」の烙印を押されたりしたら、もう当分日本に女性トップは現れない気がします。

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