ナベツネ逝く

 「ナベツネ」こと渡辺恒雄が亡くなりました。98歳。戦後日本を象徴するような人物がまたひとりいなくなりました。戦争を生身で知っている従軍した世代の最後の生き残りという感じの人でしたから、いよいよ日本人にとって戦争は遠いものになっていくと思います。それだけ日本の平和が長きにわたって続いてきたということですから、ある意味誇らしいことではありますが、今後もこの平和が守られ続けるのかどうか心配にもなります。口だけ勇ましい人間ほど危なっかしいといつも思っています。
 ナベツネは保守派の言論人でしたが、今のよくわからないネトウヨ的な発言は全くしませんでした。なにせ少年時代は「反軍国少年」だったそうですし、戦後は共産党に入党しています。筋金入りの反戦家であり、総理大臣の靖国参拝を厳しく批判してきました。ナベツネの反戦論には頷けるものが多く、ジャーナリストとしてのナベツネはむしろ社会民主主義者と言えるのではないかと思います。
 ただナベツネが世間の耳目を引いていたのは言論人としてではなく巨人のオーナーとしてでした。本人は野球自体には全然興味がなく選手の名前も覚えていないしルールもよくわかっていなかったらしいですが、経営者としての視点から巨人中心主義の主張を繰り返していて、心ある野球ファンから批判され続けてきました。またJリーグ発足時から当時の川淵チェアマンと激しく対立して、ヴェルディの経営から読売新聞が手を引くことに至りました。川淵のことを「独裁者」と批判し、川淵から「独裁者に独裁者と言われて光栄」などと言い返されたこともあります。
 中日ファンとしては巨人のことばかりで野球界全体の発展を考えていないようナベツネの言動にはいつも反発を感じていましたし、巨人を身贔屓し過ぎてむしろ弱体化させたのではないかと思っています。野球を知らないオーナーが率いて口を出しまくれば、そりゃ弱くなっても不思議はありません。イヤなジジイで老害の典型だったナベツネですが、亡くなってみると妙に可愛げもあるジジイだったような気もします。ご冥福をお祈りいたします。
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