鈴木と新谷の名勝負

 駅伝ファン、特に女子駅伝ファンとして全日本大学女子駅伝と並んで楽しみなクイーンズ駅伝(全日本実業団対抗女子駅伝)が開催され、高橋尚子が「伝説に残るシーン」と言うほどの名勝負が繰り広げられました。主役は優勝候補の積水化学のエース新谷仁美とJP日本郵政グループの支柱鈴木亜由子。ともに東京五輪代表選手です。と言っても、新谷は前田穂南の持つマラソン日本最高記録の更新を狙っているほど好調と伝えられているのに対して、鈴木は復調途中で新谷とはかなり実力差があると見られていました。
 レースは日本代表経験者を揃えて臨んだ「史上最強」の呼び声が高い絶対的優勝候補の積水化学に対して、郵政Gは故障明けからの復帰レースとなった3区のエース廣中璃梨佳ら1区から4区まで全員が区間順位3位以内と安定した走りを見せてトップで5区の鈴木にタスキを渡しました。遅れること22秒差で積水化学が2位で新谷に。この程度の差なら十分に新谷の射程距離範囲内です。予想通りに新谷がじわじわと鈴木との差を詰めて4km付近で追いつきます。中継車から解説していた野口みずきもこのまま新谷が一気に鈴木を突き放すと予想したのですが、ここから鈴木が粘りの激走を見せます。新谷の後ろにピタリとつけて新谷を風除けにしながら約5kmを並走しました。
 残り1kmのあたりで鈴木がスパートし、10mくらいの差をつけましたが、さすが新谷はまた差を詰めて残り500m付近で追いつきました。こうなると地力に勝る新谷の勝ちかと思いきや、残り200mでまたも鈴木がスパート。そのまま首位を譲らずにアンカー6区の太田琴菜につなぎました。新谷も粘って1秒差で森智香子にタスキを渡して勝負はアンカー勝負にもつれ込みます。一時期は森が逆転したものの、太田が追いつき最後は下り坂を利用して一気にスパートし、郵政Gが4年ぶり4度目の優勝を飾りました。
 個々の力が他チームより抜けている積水化学に対して、郵政Gは鈴木曰く「チームの成熟度が高く、チームとしての団結力もある」ということで、まさにこれぞチームスポーツである駅伝の醍醐味というレースを展開しました。持ちタイムの合計だけでは測れない駅伝ならではの魅力が堪能できる素晴らしいレースでした。
 僕が高校生の頃から注目していた鈴木も今ではもう33歳になりました。2014年の郵政G創部当時からの唯一のメンバーであり初代主将です。オリンピックや世界選手権などに出場しながら、10年連続でクイーンズ駅伝を走ってきたチームの象徴が見せた激走が、今後もその背中を追う郵政Gの後輩たちに受け継がれていくのでしょう。来年の積水化学の巻き返しとともに楽しみです。
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