NHKの大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』は見るに耐えないドラマだと思います。いや、視聴率はそれなりにずっと取れているから、そうは思わない人もたくさんいるのでしょう。だから全ての人にとってダメだとは言えませんが、少なくとも僕はもう見る気が失せてしまいました。もしこのドラマを好きな人は、これからドラマの批判を書きますので読まない方が良いかも知れません。
そもそも昨年主要キャストが発表された時に、僕は俳優の年齢設定がおかしいということを危惧しました。鈴木保奈美と宮沢りえの親子役はあり得ないと。そして、それは単に年齢だけの問題にとどまらず、演出も脚本も全てにわたって「史実無視」どころか「リアリティ無視」というカタチで露呈して、ドラマ全体が訳の分からないファンタジーかイリュージョンのようになってしまっています。
いちいち問題点を挙げていくとキリがありません。言葉使いは現代語そのまま、考え方も発想法も現代人と同じ、登場人物の内面を掘り下げることはせず、マンガ以下の底の浅い人物描写などはまだ序の口。年端もいかない年齢の娘を20代半ばの女優が演じ、しかもそんな幼児が戦国の世を駆け回って、天下人に説教を垂れる、戦の軍議を家族会議で話し合う、亡霊のように死んだ人間が登場して生きている人間に憑依し干渉する。こんなドラマはもはやSFかコメディでしかあり得ません。
脚本の田渕久美子は『篤姫』がマシだったので期待したのですが、今回のトンデモ脚本を書いているのは、前回と違ってきちんとした原作がないオリジナルだからでしょう。『篤姫』では宮尾登美子の原作を読んだ時にドラマとの「重み」の違いを感じ、もっと原作に忠実にドラマ化した方が良いのにと思いましたが、問題は脚本家のセンスと知識にあったことが、今回のドラマでよくわかりました。
ただ悪いのは脚本家だけではないと思います。おかしなファンタジー世界を作り上げている演出家もダメですし、歴史上の人物であることを忘れているかのような軽い演技をしている俳優もダメ、何よりそんなドラマを恐らく意図的に作っているプロデューサーがダメダメなんだと思います。
今回の大河で一番酷いと思うのは、歴史に対する尊敬の念とか謙虚さが感じられないことです。少なくとも去年の『龍馬伝』には登場する歴史上の人物たちに対しても、また歴史そのものに対しても真摯に向き合おうとする姿勢が感じられました。『坂の上の雲』はさらに原作者である司馬遼太郎に対するリスペクトも含まれていて、それがドラマ全体を引き締めています。しかし『江』から感じるのは「面白くしてやろう」という驕り高ぶりだけです。秀吉への悪意のある描き方、初のおちゃらけにそれを強く感じます。
自分たちの歴史を面白おかしく改変して省みない姿勢、歴史上の人物たちに敬意を払わないで歴史ドラマを作ったところで、心に訴える作品になるはずがありません。単につまらないだけならまだしも、見ていてだんだん腹が立ってくるドラマというのは久しぶりです。突っ込みながら楽しんで見る、というレベルを超えてしまったので、もう見ないことにしました。

コメント
コメント一覧 (8件)
岸谷五朗は
この脚本・演出で秀吉を演じ続けることに異を唱えないのでしょうか?
もともと岸谷五朗には何の罪もないのですが,
たぶん関白になってもあの演技を強いられると思うので,
そうなればなったで,「俳優の罪」は真っ先に問われることになるんでしょうから。
今の上野樹里に対する批判がかまびすしいのと同様に。
Unknown
あかお先生、同感です。岸谷の胸中はわかりませんが、彼ほどの俳優ならもう少しスタッフにモノを言っても良いのではないかと思います。批判の矢面に立たされるのは「結果」である演技者ですからね。
あなたの意見に賛成です。
大河ドラマを見て歴史だと思う人もいるかもしれません。歴史は歴史かが作るもの、本当の事は分からないのが歴史かも知れません。それにしても「江」はヒドイ。大河ドラマの重みはありません。秀吉は沢山の国に分かれて戦いを繰り返す日本を一つにしたかった。戦いで一つにしても、それは力で無理やり一つになった国であり、彼の思う国ではなかった。自分の過ちに気付いてからは、秀吉は後悔の念で気が狂いそうだった。
こういう、お話だって書けるはずです。
それから、朝鮮の人々は優れていて素晴らしい民族だ。そんな優れた朝鮮を攻めるのは日本人として恥ずかしい。
これは、もう、やらせとしか思えないです。あの当時、そういう事を行ったとは思えません。江を見ておりますと、日本人は恥を知りなさいと言うメッセージが伝わってきます。何故、そのようなドラマ作りをしているのでしょうか?
もしも、本当に打ち切りになったら?
もし、「江 姫たちの戦国」が3月後半に打ち切りが決まったとしたら、残りの時期はどうしたんでしょう?地震発生直後に「打ち切り」説が一部からありました。
管理人クリタ氏がご指摘(ご注進?)する記事の内容などを理由に、大河ドラマが打ち切りになる可能性は低いと思いますが、もし現実に打ち切りになるような事があると、日本の全テレビ局が時代劇を放送できなくなる事もあり得ます。「NHKがフィクション時代劇を全否定した」と言う解釈になるので。
どんなに悪いケースでも、番組不評の責任を取って主役らを「強制更迭」させる程度でしょうね。
ただ、俳優らが「慰謝料訴訟」を起こす可能性を孕みますが。
大河ドラマの主役に冷たすぎます
「大河ドラマの視聴率が低かったら主役に対して芸能界を引退しろ」と言う様な、排除の論理には断固反対です。そんな理屈では誰も大河ドラマの主役なんかできないですよ。番組自体が成立しません。あなたの言い分はそういう感じがするので、「フィクションドラマ完全否定論理&俳優いじめ」にも受け止められます。
極論を言うと、「大河ドラマを今すぐ辞めるべきだ」との意見なんですか?
テレビドラマがなくなったら
p.s.
「仮に」の話ですが、NHKが一切のドラマの放送を止めるとなると、民放テレビ局もドラマなんかすぐにやめますよ。
海外のドラマも一切なくなります。
そうなると俳優が大量失業します。
本当にそうなってもいいですか?
日本人と歴史との向き合い方はどうすればいいんですか?
結論を言うと日本人は歴史番組を見るなという言い分ですか?
大河ドラマが悪者なら民放の時代劇全部が悪者ですよ。
さっきから大河ドラマなどについて、いろいろ考えすぎて困惑しております。
上記、えびすこ様へ
さて、主様は「視聴率が低かったら~」といった趣旨で書いておられるでしょうか?
最後の4行だけでもしっかりお読みになるべきではないでしょうか。
私は、この文を読んだ限りでは「大河ドラマであるならば(民放のような視聴率だけ考えるドラマとは違い)民族の成り立ち・歴史に対する真剣さを持て。」との叱咤激励と取れました。
「俳優が大量失業」とありますが、このような番組が流れる様ではその日は近いかもしれませんが。